ゆきどれ

東京に、雪が積もった。

目覚めたら銀世界。
部活も無いし、用事も無い。



こんな雪の日は、あれしかない。



乾は窓を離れてクローゼットへ向かう。
いつもの二倍、暖かくして眼鏡をかける。
曇り空を見上げて呟いた。


「海堂は‥この時間には起きてるよな‥」


午前八時半。
乾は携帯と財布、ホッカイロを二個コートのポケットに詰め込んで家を飛び出した。




その20分後

海堂の携帯が無機質な着信音を鳴らす。

「…‥ハイ‥」

ろくに発信者を見ずに電話に出る。
海堂に電話を掛ける人は限られているから。

「あ、海堂?起きてた?」
「…はい‥どーしたんスか?」

素っ気ない恋人の顔を想像して笑ってしまう、雪の中。

「海堂の家の前。」
「はぁ!?こんな寒い日まで何してんだ…」


口では冷たく言うも、急いで洋服を着込む。
口元が緩んでしまう。

恋人の、雪訪れに。

急いで階段を降りながらコートを着込む。



玄関を開ければ真っ白な雪の中、手を振って佇む恋人。


「おはよう、海堂」
「おはよう‥じゃねぇっスよ…‥何の用っすか?」


用事なんて無い。


「海堂元気かなぁと思って。」


白くなった吐息で見え隠れする笑顔に、怒る気も消える。


「‥んな‥雪国じゃあるまいし…」

冷たい手をポケットに入れて、
嬉しい気持ちを喉に押し込んで。


「よし、散歩しよっか。」


海堂の考えてることは、だいたい解る。

今の気持ちはきっと同じ。


海堂を置いて、歩き出す。
「あ、待てよ!」



雪訪れが、デートに。

海堂は乾の背中に雪団子を投げつけた。

「‥うわ!背中に雪が入った!」

海堂に会いたくて、雪訪れ。


「ふん、いい気味っすよ」

雪訪れが嬉しくて、乾の手を握る。


「雪なんか触るから‥手が冷たいじゃないか」


繋いだ手は乾のコートのポケットの中に。


「…‥暖かいだろ?」


「…‥フン‥」



ははっ、と空に向かって笑いを飛ばし海堂の手を強く握る。


雲が重みを増し、雪を降らす。


冷たい雪は二人に雪訪れを、手には温もりを、降らせた。



おわり












はい、管理人カナエです。
1000HITのキリ番小説をぷた子様からいただきました!!
初めてのキリ番でとても嬉しかったです。
題名の『ゆきどれ』ですが、大雪の日に安否を心配して誰かの家を訪ねるって意味です。

それだけです。

では、ぷた子様!!!リク有難う御座いました!!



カナエ 2005/02/08



うふふふ。「GO-MAD」様の1000HITを踏みまして、意気揚揚とリク小説を書いていただきました♪
『雪の日の乾海』というリク内容だったのですが、おほほほほ(!?)
「雪訪れ」ですって!なんだか、すごく、恋人っぽい言葉の響きではありませんか!
乾海恋人レヴェルが高いですよぉ〜。
雪の中にいるふたりがとっても綺麗でドキドキしちゃいました!
アミコさん、カナエさん、素敵な小説をありがとうございます!!これからも宜しくお願いしまっすvv